金沢大学医学類 医王保護者の会

医学類長挨拶

金沢大学医学類長 杉山 和久

   2020年4月より医学類長に就任致しました眼科教授の杉山和久でございます。医王保護者の会会員の皆様には、金沢大学医学類学生のためにいつも多大なるご支援・ご協力をいただき、心より感謝申し上げます。  
金沢大学医学類は150年以上に及ぶ日本で屈指の長い歴史を有する医学校です。旧帝国大学に次いで、医学専門学校から大学に昇格したのは全国で6校(旧制6医大:金沢、新潟、千葉、岡山、長崎、熊本)で、大正12年(1923年)4月に旧制金沢医科大学となり、その初代学長が、高安病を発見した高安右人教授(眼科学)であります。今までに国内外で活躍する多くの優秀な卒業生を輩出した、この伝統ある金沢大学医学類に入学し、医学を学ぶ学生諸君は幸運と思います。 金沢大学医学類の教育理念は「人類の健康・福祉に貢献できる人間性と総合的な能力を有する医療人・医学者の育成を図る」ことです。医学類においては、知識及び技能の習得はもとより、医療・研究に対しての倫理観とプロとしての自覚、コミュニュケーション能力の開発、そして、危険・事故を予防する能力を高めていけるように、教育に配慮しています。 近年のすさまじい医学の進歩に伴い、最新の医学知識は急速に増加し、学生が学ぶべき内容はますます増加、高度化しています。ここ数年で教育カリキュラムの再編が加速し、これまでに経験したことのない改革が進んでいます。これは医学教育の国際認証と密接に関連し、ほぼすべての教育項目について評価機構による審査を受け、より良い医学教育の実践を図らなければなりません。金沢大学医学類の使命と目標の実現にふさわしい医学教育を目指し、医学類を挙げて精力的かつ緻密な改革を行っております。 医学類の学生の教育環境の一例として、新しい医学図書館は非常に快適であり、恵まれた勉学の環境として利用できます。医王保護者の会からは、継続的に医学図書の充実にかかるご支援をいただいております。さらに、医学類学生の実習、活動、顕彰など様々な点でご支援をいただいており、改めて御礼申し上げます。一層の医学教育の改善、教育環境の整備を進めて、医学教育の充実を図りたいと思っております。医王保護者の会会員の皆様には今後も変わらぬご支援をお願い申し上げます。  
最後になりますが、高校時代の成績が良かったため、親や教師に勧められて医学類に入り、「自分はなぜ医師という職業を選んだのか」、そして「医師とはどのように在るべきなのか」という悩みを抱える医学生は多いと思います。もし、ご子息がそのような悩みをお持ちなら、2002年4月の朝日新聞朝刊「私の視点」に、金沢大学附属病院長であられた河﨑一夫先生が書かれた「医学を選んだ君に問う」という論説をお読みください。河﨑先生は私の先代の眼科教授でもあります。医学類の学生教育を担当する私は、最近この論説を身近に置き、自問自答しております。
医学生へ 医学を選んだ君に問う 元金沢大学付属病院長 河﨑一夫
君に問う。人前で堂々と医学を選んだ理由を言えるか? 万一「将来、経済的に社会的に恵まれそう」以外の本音の理由が想起できないなら、君はダンテの「神曲」を読破せねばならない。それが出来ないなら早々に転学すべきである。さらに問う。奉仕と犠牲の精神はあるか? 医師の仕事はテレビドラマのような格好のいいものではない。重症患者のため連夜の泊まりこみ、急患のため休日の予定の突然の取り消しなど日常茶飯事だ。死に至る病に泣く患者の心に君は添えるか?君に強く求める。医師の知識不足は許されない。知識不足のまま医師になると、罪のない患者を死なす。知らない病名の診断は不可能だ。知らない治療をできるはずがない。そして自責の念がないままに「あらゆる手を尽くしましたが、残念でした」と言って恥じない。こんな医師になりたくないなら、「よく学び、よく遊び」は許されない。医学生は「よく学び、よく学び」しかないと覚悟せねばならない。最後に君に願う。医師の歓びは2つある。その1は自分の医療によって健康を回復した患者の歓びがすなわち医師の歓びである。その2は世のため人のために役立つ医学的発見の歓びである。その1の歓びは医師として当然の心構えである。これのみで満足せず、その2の歓びもぜひ体験したいという強い意志を培って欲しい。心の真の平安をもたらすのは、富でも名声でも地位でもなく、人のため世のために役立つ何事かを成し遂げたと思える時なのだ。

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